深川そば(あさり蕎麦)

2023/05/16 ブログ

池波正太郎も好んでたべた、深川鍋、深川めし。鰹と昆布で採っただしで、あさりを煮ると、何とも言えない、強烈な旨みが舌に染みわたります。鰹のイノシン酸、昆布のグルタミン酸、貝だしのコハク酸。旨みの元であるアミノ酸が複数合わさると、1+1=4にも5にもなる相乗効果が生まれ、強烈な旨みを感じます。

深川そばは、この強烈なあさりの旨み出汁で、蕎麦を召し上がって頂きます。一滴たりとも脂を使わず、それでいて、十分に満足感を得られる逸品です。

 

梅安最合傘 仕掛人・藤枝梅安

春の足音は、いったん遠退いたらしい。

 毎日の底冷えが強(きつ)く、ことに今夜は、

(雪になるのではないか……)

 と、おもわれた。

 梅安は、鍋へ、うす味の出汁を張って焜炉にかけ、これを膳の傍へ運んだ。

 大皿へ、大根を千六本に刻んだものが山盛りになっていて、浅蜊のむきみもたっぷりと用意してある。

 出汁が煮え立った鍋の中へ、梅安は手づかみで大根を入れ、浅蜊を入れた。千切りの大根は、すぐに煮える。煮えるそばから、これを小鉢に取り、粉山椒をふりかけ、出汁と共にふうふういいながら食べるのである。

 このとき、酒は冷のまま、湯のみ茶わんで飲むのが梅安の好みだ。